セルロースのデップで「かぶって」しまった場合には ~ハンドメイドTips

 最近ハンドメイドに本腰を入れようとしているお友達から今回のテーマとなることを質問されました。
 せっかく回答するなら、他にもこれで悩んでいる方の助けになるかと思い、私のブログコンテンツとして書いてしまおうと考えた次第です(^_^)


 今回のテーマは「セルロースデッピングした際に、表面が白濁化(=かぶって)してしまった場合の対処方法」です。
 例によって結論が最初に書いていないという、文章の書き方としてはダメダメな書きっぷりですが、ご容赦ください。(色々脱線しますw)


 ちょっと振り返りになりますが、以前の下記のブログで、白濁化する際の理由・原理について説明しました。

 

lyspeche.hatenablog.com

 

 今回の白濁化の対処方法を書くにあたって、もっと詳しい「構造」を理解することがすごく大切なので、今回は細かい内容に突っ込んでいきますw(「構造」を理解すると、対処法として「どうして○○をすると白濁化が解消されるのか」がよく理解できます)
 始まり始まり~w


 通常、湿度が低く「かぶらない」状態の場合、下記の図のように、ボディーの上に乗ったセルロースの表面は、滑らかな鏡のように平らになります。これによりキレイな透明な層が形成されます。複数回デッピングすることでこの厚さを増していき、強固なキレイなルアーができていきます。

 ここで一つポイントなるのは「セルロースは、固まったセルロースを自ら溶かす」という性質がある点です(★1)。これ、後で出てきますw


 では「かぶる」時に、どんなことが起こっているのでしょうか?
 私の前回の説明では下記のように記載しました。
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 湿度が高い状態でセルロにディッピングして、つるして乾燥させようとすると、表面が白濁します。
 この状態、色々なサイトでたくさん書かれていますが、ルアーの表面(本来は透明ガラスのように滑らかに硬化するところが)に細かい水滴がついて、非常に細かい凸凹状態となり、光を乱反射してしまうことで曇りガラスのような白く濁ったような状態になります。
 この「細かい水滴」は言わずもがな結露することによって生じます。
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 上記を図で示したのが下記になります。(自分で顕微鏡で観察したわけではありませんので、現実とは違うかもしれませんwあくまで私のイメージです)

 気化熱で急速に冷えたセルロース表面に接する空気から水滴が生じた(付いた)状態になります。(「2-①」の状態)
 この後で、水滴が乾燥して消えると「2-②」のように表面が凸凹の状態になり、人の目から見た状態が「透明でない(=白濁した)」ように見えます。


 白濁化した状態・構造が理解できれば、あとはこれを「1」の表面が平らな状態にすることを実行すればよい、ということが分かりますね(^_^)


 表面を滑らかにするための方法はいくつもあります。下記がその例です。
(1)なんにも気にせず、次のデッピングをする(笑)
 ⇒「軽い」かぶりの場合はこれで全く問題ありません。次のデッピングをすることで上記の「★1」の特性も相まって、白濁化が解消できます。
(2)ラッカーシンナー・リターダー(アノン)などの溶剤を吹き付ける、もしくは筆塗りする、もしくはデッピングする
 ⇒要は、セルロースの表面を溶かすことができれば、滑らかになって、人の目からみた状態でクリアになります。


 ちなみに、ルアーデッピングに使う2大巨頭のもう一つであるウレタンは、空気中の水分と結合することで硬化する動きで、(セルロースでいうところの)気化熱うんぬんの現象が起きないため、基本的には白濁化しない、と聞いたことがあります。(私自身ウレタンを使っていないので、詳しく調べたことがありません)


 また、前回のブログの最後に下記のくだりがあります。
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ちなみに、この「かぶり」は、悪いことはあってもいいことはほとんどない扱いなのですが(実は「かぶり」をわざと利用する、という方法もあります)、製作途中「かぶり」は気にしなくてもいい場面が大半です。というのは、軽い「かぶり」は次のデッピングで勝手に解消されてくれます。あくまで「軽いかぶり」なら、です。湿度が非常に高い状態でデッピングして「かぶる」と、実はかなり深刻な状況を引き起こします。
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 この「わざと利用する」とは一体何を言っているのか・・・・。

 ルアーを何回もセルロースでデッピングしていくと、表面の凸凹が徐々に解消されていくのですが、それでもキレイなルアーを作るためには途中途中でサンドペーパーを使ってキレイな表面になるよう手を入れる必要があります。
 順調にデッピングが繰り返されてクリアなセルロース面のまま作業を続けていると、表面の凸凹が人の目から見て判別できないのです。その結果、後々でサンドペーパーをかけた際に、その凸凹を修復する(削り落とす・滑らかにする)のに苦労することになります。
 「傷は浅いうちに直せ」ということで、デッピング回数が少ないうちにこの凸凹に気が付くと、補正が楽になります。
 
 で、デッピング工程の途中で表面が白濁化することで、この凸凹が人の目から判別しやくすなる、という「不幸中の幸い」が生まれますw
 これが「利用する」ということです。(本当に「わざと白濁化させる」かは、皆さん次第ですw)

 

 では『「湿度が非常に高い状態でデッピングして「かぶる」と、実はかなり深刻な状況を引き起こします。』とは何を言っているのでしょうか。下図をご覧ください。

 湿度が高くて、温度の急激な下降によって生じる水滴の量が多いと、上記のように水滴同士がくっついてより大きな粒になります。その結果、凸凹の「ボコ」が深くなります。乾燥すると「3-②」のようになります。

 「かぶり」が軽微で「2」のように小粒の水滴による凸凹の場合、上記の対処法「(1)なんにも気にせず、次のデッピングをする(笑)」でもキレイに解消できてしまうのですが、「3-②」のように凹みが大きくなっていると、次にそのままデッピングする際に、表面に気泡を抱く場合があります。これが難物なんです。これができて固まってしまった場合は、状態にもよりますが、気泡をサンドペーパーで削り取る、か大きい凹みはパテで埋める、など、もうひと手間がかかる場合があります。


 と、まぁ、ハンドメイドをやらない人にとっては「どうでもいい話」でしたがw、もしこれで悩んでいる人の一助になれば幸いです(^_^)