セルロースの「かぶり」には負けないぞw ~ハンドメイドTips

 今回はセルロースの「かぶり(乾燥した時の表面の白濁)を回避するには」がテーマです。
 
 まずはその原因について振り返ってみましょう。
 
 ここ数日、関東地方はぐずつき気味の天気で、湿度が高い状態が続いています。
 ハンドメイドクランクを作っている人(特に、コーティングでセルロースセメント(以下、セルロ)を使っている人)にとってこの「湿度が高い」というのは非常に困りものなのです。
 というのは、湿度が高い状態でセルロにディッピングして、つるして乾燥させようとすると、表面が白濁します。
 この状態、色々なサイトでたくさん書かれていますが、ルアーの表面(本来は透明ガラスのように滑らかに硬化するところが)に細かい水滴がついて、非常に細かい凸凹状態となり、光を乱反射してしまうことで曇りガラスのような白く濁ったような状態になります。
 この「細かい水滴」は言わずもがな結露することによって生じます。

 では「結露って何?」ということで、ここで昔なつかしいこの図が非常に参考になります。

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(中学生・高校生向け映像授業サービスTryITさんから借用)
https://www.try-it.jp/keyword_articles/58/

 中学生の理科で勉強して、必ずと言っていいほどテストに出た図です(笑)。
 ちょっと理解しやすいように、図に沿って極端な例で説明します。(空気中の水蒸気量はそうそう簡単には変動しない前提です)
 
 製作中のルアーの表面温度が25度として、この状態でセルロにデッピングします。
 引き上げると、そこから一気に乾燥(=気化)が始まります。セルロの気化率がどれくらいなのかはさておき、このペースが非常に早く、気化することで「気化熱」によりルアーの表面温度が下がります。例えばこれによりルアー表面が15度より少しでも高い状態でしたら結露は生じません(「かぶり」が生じない状態です)。
 
 しかし、これが5度まで下がったとします(実際にはこんなに下がりませんけど:笑)。そうすると上記の図で「水滴になる」と書かれている分の水が(水蒸気の状態でいられなくなり)水滴となってルアーの表面に付着します。これが結露(=「かぶり」)ですね。
 湿度が高い=単位量の空気中の水蒸気量が多い 状態だと、少ない温度変化でこの状況が生じやすくなっているというわけです。

 ・・・・と、まぁ、原理は上記で踏まえたとして、では、どうしたら実際に湿度の高い状態でセルロにデッピングしても「かぶらない」(クリアな表面の状態)にできるか?ということを考えてみます。
 
 
 よく語られている王道的な手法は、セルロースにリターダー(FOKブランドですと「アノン」)を加えることによって、気化スピードを遅らせる、でしょうか。
 
 リターダーはこれ自体有機溶剤で、セルロースに混ぜることで「固まりづらくする」効果があります。溶かす力がハンパなく強いので、石油製品の代表格であるプラスチックの容器に入れるとそのプラスチックを溶かして穴があくくらい溶かします。
 この方法は、これはこれで効果的なのかもしれませんが、リターダーをセルロに混ぜると粘度が下がって、1回のデッピングでコートできる厚みが非常に薄くなります。おのずと目的の厚さまでコーティングするためにはデッピングの回数が増えるので、面倒くさがり屋の私wは、この方法は取りません。(何回も使うことでセルロ自体の粘度が高くなり過ぎてきた時にはアノンを入れることはします。あくまで粘度を下げる目的だけです。)
 
 結構本格的にハンドメイドをやっているかたでしたら、「すぐにドライブースに入れる」なんていうのも普通にやっているかもしれませんね。
 ちなみに私はちゃんとしたドライブースを持っていません(笑)
 実は最近「自作のなんちゃってドライブース」を作って使っているので、それもそのうちにご紹介するかもしれません(^_^
 

 では、セルロの粘度は落とさずに、もっとお気軽に、「かぶり」を抑える方法って無いのでしょうか?
 ・・・ということで私がしばらく前まで実践していた方法を紹介します。
 
 
 一つ目は、「デッピングする直前に、ドライヤーの熱風でルアー自体を温め、直ぐにデッピングする」方法です。
 これは、あらかじめボディーを熱くしておくことで、デッピングした後で気化して気化熱で温度が下がったとしても、結露が生じる温度までルアー表面の温度が下がらないようにする、というのが狙いです。
 これは、めちゃくちゃ湿度が高くなければ、結構「かぶり」を防げます。(実際には湿度だけが問題なのではなくて、その時の気温も関係しているのは、上記の図を見ていただければわかりますね。)

 二つ目は、普通にデッピングして引き上げた後に、「ドライヤーの熱風を(ルアーから少し離した位置から)ルアーを動かしながら全体に吹きかけて強制的に乾燥させる」方法です。これ、どれくらいの時間を吹けばよいのか気になりますが、お使いのセルロースのブランドの違いとその時の湿度の高さによると思いますが、だいたい30秒程度吹けば、結構防げます。(あくまで目安です。その時の条件によります。乾燥を早めたいがために近くから吹くと表面が荒れてしまいますので、程よく離してください。

 セルロース自体、どのブランドでも結構、表面の乾燥(=硬化)は早いので、この表面の表面、本当に上っ面だけを強制的に固めてしまえば、たとえその後で結露しても表面が浸食されずにクリアな状態が保てます。
 私が使っているFOKさんのセルロはこの乾燥が本当に早いので、粘度調整は少しだけ気を使いますが、普段のデッピングとその後の乾燥は本当に楽です。よくできています。
 「無理やり人為的に乾燥させると、悪い影響がでないのかしら?」と私も最初は考えたのですが、全然問題ありませんでした。

 と、ここまで書いてみて、上記の「一つ目」と「二つ目」を併用すればさらに効果的に「かぶり」が防げることはご想像の通りです。
 
 ドライヤーを使うこと自体ちょっと面倒で、しかもデッピングを外でする人はそこにコンセントがあるか?という課題もありますが、もしそれにもめげずに高湿度下でデッピングしたい人は、試してみる価値はあると思います(笑)。 
 
 
 と、まぁ、色々と書いてしまいましたが、あくまで自己責任で実践してください。「書かれていた通りやってみたら大変なことになった」という苦情はご勘弁ください。(^_^;)
 
 
 ちなみに、この「かぶり」は、悪いことはあってもいいことはほとんどない扱いなのですが(実は「かぶり」をわざと利用する、という方法もあります)、製作途中「かぶり」は気にしなくてもいい場面が大半です。というのは、軽い「かぶり」は次のデッピングで勝手に解消されてくれます。(あくまで「軽いかぶり」なら、です。湿度が非常に高い状態でデッピングして「かぶる」と、実はかなり深刻な状況を引き起こします。これについては、実際に体験してみるとよく分かります(^_^;))